子どもがいない妻に全財産を相続
遺言者(被相続人)の妻と、遺言者の両親(両親がいない場合は祖父母)が相続人である場合、法定相続分は妻が3分の2、両親が3分の1となります。
ただし、両親には財産全体の6分の1の遺留分があるので、「全財産を妻に相続させる」と遺言しておいても、遺留分侵害額請求があれば6分の1に相当する金銭を渡さなければなりません。
遺言者の親が亡くなっていて、相続人が妻と遺言者の兄弟姉妹(代襲相続の甥・姪を含む)の場合は、兄弟姉妹には遺留分がないので「全財産を妻に相続させる」と遺言しておけば、妻に全財産を渡すことができます。
妻に全財産を相続させるため「両親は遺留分を放棄してほしい」と書いても法的な効力はありませんが、たとえば「妻〇〇が、不自由のない生活をおくれるように遺言者の意思を尊重していただきたい」等の理由を書き添えることで、遺言者の想いを伝えることができます。
妻にすべての財産を相続させる場合、「遺言者の所有する全財産を妻〇〇に相続させる」だけでも構いません。ただし、財産の明細を特定しておいた方がよいかと思います。
土地や建物など、不動産の表示は登記事項証明書の記載(未登記の場合は、固定資産税課税台帳登録証明書の記載など)とおりに書きます。
妻にすべてを相続させる場合も、遺言執行者を指定しておくことができます。妻を遺言執行者に指定し、妻が適宜司法書士等に依頼するように記載しておくことも可能です。
子どもがいる妻に全財産を相続
遺言者の妻と子が相続人である場合、法定相続では妻が2分の1、子が2分の1を人数分で均等に分けることになっています。
妻に全財産を相続させたいと思っても、子には財産全体の4分の1の遺留分があります。子が遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求めてきたときには、支払わなければなりません。財産が自宅の土地と建物だけであれば、土地と建物を売ったお金で払わなければならない場合もあるでしょう。なお、妻に全財産を相続させたとしても、妻が亡くなったときの相続では、相続人は子だけになります。その点を説明して、法的効力はありませんが、子が遺留分侵害額をしにくいように、遺留分の放棄を希望する旨を記しておくのもよいでしょう(たとえば、妻〇〇が老後の生活に不自由しないように、遺言者の意思を尊重して、遺留分を放棄してくれることを望みます)。
子どもがいる妻に法定相続分より多く相続させる
妻に法定相続分よりも多く相続させたい場合は、遺言による相続は法定相続に優先するので、遺言でその相続分を指定します。相続でのトラブルを防ぐためには、遺留分を侵害しない範囲で相続分を指定しておいた方がよいでしょう。
相続人が妻と子二人の場合、子の遺留分は全財産の4分の1なので、妻には全財産の4分の3まで相続させることができます。
遺言の指定により妻の相続分が、子の遺留分を侵していても、妻に4分の3以上であっても、遺言どおりに妻に相続させることができますが、子の遺留分を侵害した額について、子から請求されることがあります。
遺言書の書き方としては、次のようになるでしょう。
妻〇〇〇〇 8分の6
長男〇〇〇〇 8分の1
次男〇〇〇〇 8分の1
子どもがいない妻に法定相続分より多く相続させる
夫婦に子どもがなく、相続人が妻と遺言者の両親の場合、法定相続分は妻が3分の2、両親が3分の1となります。妻に多く相続させるには遺言が必要です。遺留分を侵害しない範囲で考えると、両親の遺留分は6分の1なので、妻には6分の5まで相続させることができます。
相続人が妻と遺言者の兄弟姉妹の場合、遺言がないと妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1という、法定相続分とおりの相続になってしまいます。
兄弟姉妹にも財産を譲りつつ、妻に法定相続分よりも多く相続させたいときは、それぞれの相続人の相続分を指定しておきます。兄弟姉妹へは遺留分はないので、遺留分への配慮は必要ありません。
妻と両親がいる場合の遺言書は遺留分を考慮して、次のように書くとよいでしょう。
妻〇〇〇〇 12分の10
父〇〇〇〇 12分の1
母〇〇〇〇 12分の1
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