土地・建物は別々に記載
不動産を渡す場合、渡す相手が法定相続人以外であれば、「譲る」「与える」などの表記の仕方でも構いませんが、相手が相続人の場合は「相続させる」の表記を使います。
不動産を名義変更のために登記する場合、相続では、その相続人の単独申請で登記できますが、遺贈では、他の相続人または遺言執行者との共同申請になってしまうからです。
土地・建物は別々の項目で記載します。書き方は、法務局から登記事項証明書を取り寄せて、登記事項証明書の記載(未登記の場合は、固定資産税課税台帳登録証明書の表記)通りに書きます。
土地は「所在、地番、地目、地積(面積)」、建物は「所在、家屋番号、種類、構造、床面積」などを書きます。物件がマンションの場合も、建物と敷地権について登記事項証明書の記載通りに記載します。
なお、不動産の登記にかかる登録免許税は、相続では0.4%です。贈与では2%となります。さらに贈与では不動産取得税3%がかかります。前述のとおり、相続人には、単独で登記申請できるよう「相続させる」の文言を使います。
配偶者居住権
これまでは夫の死後、妻が子と共に住んでいた自宅に住み続けるためには、財産的評価の高い自宅所有権を相続しなければならないことが多く、法定相続分からすると預貯金など他の財産は、他の相続人に渡さなければなりませんでした。
しかしこれでは、残された妻は住むところは確保できても、その後の生活に十分な預貯金を得ることはできません。
新設された配偶者居住権を利用すると、子どもなどに所有権を帰属させ、妻には配偶者居住権を取得させることで、妻が死ぬまで自宅に住み続けることができるようになりました。
取得するのは所有権より財産的評価の低い配偶者居住権であるため、その分預貯金などの財産も相続することができます。
相続財産において、自宅の土地・建物の評価の割合が大きい場合は、自宅に妻が住み続けることができるよう、配偶者居住権があることを記すことでトラブルを回避できます。
たとえば、配偶者居住権の書き方は、次のように書くのが妥当でしょう。
妻〇〇に、遺言者が所有する次の建物の配偶者居住権を、遺贈する。
土地・建物の表示 略
この場合に、妻への配偶者居住権を保障するためには「相続させる」ではなく、「遺贈する」とします。相続による取得とすると、妻が配偶者居住権の取得を希望しない場合に、その部分の取得のみを拒絶することができず、相続放棄をするしかなくなってしまう可能性があるからです。
続けて、長男〇〇に建物を譲る場合の遺言書の書き方は、次のように遺言するのが妥当でしょう。
長男〇〇に、次の建物の負担付き所有権を、遺贈する。
土地・建物の表示 略
子どもが取得する所有権は、負担付きであるため「相続させる」ではなく「遺贈する」とします。
妻への不動産の共有部分の相続
たとえば、夫2分の1・妻2分の1の割合で、不動産を所有している場合、夫の2分の1の相続財産を、妻に相続させるために遺言書を作成しておきましょう。
妻に相続させる旨の遺言がないと、夫の持分2分の1は、相続財産として分割対象になってしまいます。妻の住まいを確保しておきたい場合は、遺言書の作成が必要です。
共有部分を妻に相続させることによって、他の相続人の遺留分を侵害する場合は、遺留分の侵害額請求をしないよう希望する旨を記しておきます。法的効力はありませんが、現実として、子は、侵害額請求をしにくいかと思います。
たとえば、次のような書き方があります。
「長男〇〇、長女〇〇は、父の思いを汲んで、それぞれ遺留分の侵害額請求を行わないことを、願います」
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