相続権のない人への財産譲渡
遺言者に妻と子がいる場合、母親には相続権がありません。母親に財産を譲り渡す場合、「遺言者の母〇〇〇〇に次の財産を遺贈する」と記載します。
法定相続人以外に財産を譲る場合は、親族であっても相続ではなく、「遺贈」になります。遺言の記載は、「相続させる」ではなく「譲る」「与える」「贈る」などでも構いませんが、「遺贈する」としておくと明確です。
世話になっている嫁への財産譲渡
どんなに世話になっても息子の妻に相続権はありません。財産を譲るには、遺言する必要があります。特に息子が亡くなっていて、遺言者名義の家に同居している場合など、遺言がないと相続による不動産の分割により住む場所を失うこともあります。
特別の寄与の制度により、妻は特別寄与者として相続人に金銭請求ができるようになりました。長男が死亡したあとも、義父の介護を行なってきた長男の嫁は相続した次男とか長女に対して、金銭の請求ができます。
しかしながら、遺言を残しておいた方がトラブルを妨げます。たとえば、「長男Bの亡きあとも、献身的に遺言者の世話をしてくれたBの妻Cに、現在、居住している遺言者名義の次の物件を遺贈する。Cが今後の生活に困らないように考慮したものである。」のように記載した方がよいでしょう。
ただし、法定相続人への遺留分への配慮も必要です。
内縁の妻への財産譲渡
内縁(事実婚)の関係で、長年夫婦として生活してきたとしても、法律上の婚姻関係になければ、法定相続人にはなれません。
内縁の相手に財産を譲りたい場合、遺言書には、相手の住所、氏名、生年月日と、遺贈する財産を特定して明記します。法定相続人がいる場合は、遺留分への配慮も必要です。
内縁の妻に「財産の何分の何を譲る」としてもよいのですが、トラブル回避には財産を特定した方がよいでしょう。
なお、内縁の相手との間に子が在り、その子を認知している場合は、子は法定相続人となります。
養子縁組をしていない妻の連れ子への財産譲渡
妻に連れ子がいる場合、法的に養子縁組をしていないと連れ子に相続権はありません。財産を譲るには遺言が必要です。
再婚で先妻との間に子がいる場合でも、再婚相手の子と養子縁組をすれば連れ子には実子と同じ相続分があります。養子縁組は遺言ではできないので、生前に手続きをしておく必要があります。
継母への財産譲渡
親の再婚相手と養子縁組をしていない場合は、親の配偶者は法的には「他人」であり、遺言者の法定相続人にはなれません。財産を譲るためには遺言が必要です。
なお、養子縁組をしていた場合は、法定相続人としての順位は、子に次いで実の親と同じ第二順位となります。
娘婿への財産譲渡
結婚にあたって、妻の姓を選ぶ男性が妻の姓を名乗っても、妻の両親と男性との間に法律上の親子関係はありません。妻の両親が亡くなっても、男性は法定相続人になれません。
娘婿と養子縁組をしていない場合、財産を譲りたければ遺言が必要です。養子縁組をすれば、法定相続人となり、その相続分は実子と同じになります。
孫への財産譲渡
孫が相続人となれるのは、代襲相続人の場合です。代襲相続となるのは、遺言者の子(孫の親)が、① 遺言者が亡くなる前に死亡している、② 相続欠格者である、③ 相続人廃除をされている、のいずれかの場合です。
孫が代襲相続人でない場合は、財産を譲るためには遺言が必要です。
甥や姪への財産譲渡
甥や姪が法定相続人となるのは、限られた状況のとき(代襲相続の場合)のみです。相続権のない甥や姪に財産を贈りたければ、遺言が必要です。
他に相続人がいる場合は、トラブルのもとになりやすいので、理解を得られるように、財産を贈る理由を明確に記しておいた方がよいでしょう。たとえば、「甥の〇〇は、実子以上に親身になって私の世話をしてくれました。感謝の印に自宅の土地・建物を譲ります」のような記載です。
相続人が兄弟姉妹のみの場合は、兄弟姉妹には遺留分がないので甥や姪に全財産を贈ることもできます。
世話になった人への財産譲渡
世話になった人や恩人など、他人に財産を贈る場合は、遺言書に相手の氏名・住所・生年月日を明記し、受贈者が特定できるようにします。
法定相続人がいる場合は、遺留分に配慮し、また相続人の理解をえられるように贈る理由も明確に記しておいた方がよいでしょう。たとえば、「幼少時に父を亡くした私の面倒を長年にわたってみてくれたA(昭和〇年〇月〇日生 埼玉県越谷市千間台西1丁目〇番地〇在住)に、私の〇〇銀行〇〇支店の預貯金(定期預金 口座番号〇〇〇〇)を遺贈する」と記載します。
なお、受遺者が遺贈を辞退した場合、財産は法定相続人が相続します。
愛人への財産譲渡
戸籍上の妻とは、婚姻生活が破綻して、別居期間が長く、愛人との同居期間の方が長くなっていても相続権は妻にあり愛人にはありません。
愛人に譲りたければ、遺言しなければなりません。
愛人に遺贈する場合は、妻や子などの相続人の遺留分を考慮する必要があります。法定相続人が戸籍上の妻のみ、また妻と子の場合、遺留分は2分の1となります。遺留分を侵害しない範囲で譲りたいと考えると、愛人には2分の1まで譲ることができます。
「妻に2分の1を相続させ、残りの2分の1を愛人Aに遺贈する」という内容の遺言もできますが、トラブルを回避するためには、財産を特定して遺贈した方がよいでしょう。
寄付
公益法人や研究団体など、公益事業に寄付をしたいときは、遺贈先の名称、所在地を明記します。贈る理由も書いた方がよいかと思います。
たとえば、「遺言者は、難病研究に役立てるため、遺言者名義の〇〇銀行〇〇支店の定期預金の全額を医療法人A(埼玉県越谷市千間台西1丁目〇番地〇)に遺贈する」と記載した方がよいかと思います。
財産のすべてを寄付したいという場合もあるでしょう。相続人がいない場合は、遺言がなければ財産は国庫に帰属してしまうので問題はありませんが、相続人がいる場合はトラブルを防ぐために遺留分への配慮が必要です。
なお、遺贈先が税金を負担しないで済むためには、
- 公益性が極めて高い事業である
- 遺贈された財産を事業のために使う
- 特定の者とその家族、親戚によって運営される公益事業ではない
- 遺贈されてから2年以内に事業のために使う
といった条件があります。
越谷市・春日部市の遺言書作成美馬克康司法書士事務所

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