自筆証書遺言は紙とペンがあればすぐに作成することができますが、厳格な方式があるため、無効となってしまうケースも少なくありません。方式に則っても、遺言書を偽造されたり、内容を変造されたりする可能性もあります。さらに、紛失してしまう可能性もあり、遺言者が亡くなったあと誰にも見つけてもらえない可能性もあります。見つけられたとしても、発見した者にとって不利な遺言内容だった場合に遺言書を隠してしまうこともあり得ます。
このような短所がある自筆証書遺言ですが、さらにもう一点、自筆証書遺言は検認の手続きが必要なことも忘れてはいけません。
第1004条
1. 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2. 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3. 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
遺言書の検認
遺言書の検認とは、遺言者が亡くなった後、遺言書を発見した者や遺言者に託され保管していた者が、家庭裁判所に遺言書を提出して、相続人の立会いのもと遺言内容を確認することをいいます。
遺言書を見つけたとき、その場で開封してしまいそうですが、勝手に開封をしてはいけません。遺言書の内容を確認するための検認手続きによって見ることができます。もしも勝手に開封してしまった場合、5万円以下の過料を科される可能性があります。(過料はいわゆる罰金であり、前科になりません。)
遺言書の検認は、すべての相続人に遺言の存在と内容を知らせるため、偽造・変造などを防ぐため、という目的があります。検認でその遺言書が法的な方式に則ったもので有効か無効化を判断されるわけではなく、あくまでも存在と内容を明確にするという目的です。また、検認する前に開封してしまったために無効になるということもありません。
しかし、遺言書の検認を済ませなければ、遺言にある相続手続きを進めることができません。実務的に、預金や不動産などの名義変更手続きをする際に『検認済証明書付きの遺言書』を提出する必要があるため、検認は必須の手続きになるのです。
遺言書の検認手続き
検認手続きは、遺言書を発見した者や遺言者に託され保管していた者が家庭裁判所へ申し立てをします。相続人全員に遺言書があることを知らせなければなりませんので、法定相続人を明確にし、戸籍謄本を取得します。戸籍謄本が揃ったら、家庭裁判所へ申し立てをします。家庭裁判所から検認期日の通知があり、当日家庭裁判所の裁判官が遺言書を開封して検認をします。このとき、相続人の全員が出席しなければいけないということではありませんが、申立人は必ず出席しなければなりません。(出席できなかった相続人には、後日検認の終了通知が届きます。)検認が済むと検認済照明の申請をして、遺言書を返還してもらうことになります。
検認の申し立てから、おおよそ1ヶ月以上はかかるとみておくとよいでしょう。申し立てをする前の法定相続人を明確にしたり、戸籍謄本を取得したりする期間を考えますと、なかなか時間のかかるものなので遺言書を発見したら速やかに準備、申し立てをしなければなりません。これは、検認後に期限のある手続きをしようとしたときに間に合わなくなるおそれがあるためです。相続を放棄する手続きは相続開始を知った日から3ヶ月以内と期限がありますが、検認の手続き最中も中断されることはありません。同時進行になるので、極力早く検認を済ませなければならないのです。そのようなリスクも考え、多くの方が専門家に相談されています。
検認手続きが必要ない遺言書
公正証書による遺言と法務局で保管されている自筆証書遺言に関して交付される「遺言書情報証明書」は検認の必要がありません。法務局で保管されている自筆証書遺言とは、遺言書保管制度(令和2年7月10日から開始)を利用した遺言で法務局で管理・保管される遺言書です。
自筆証書遺言の一覧
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