公正証書遺言の方式の特徴
公正証書遺言によって遺言をする際には、次のような方式を必要とします。
- 証人2人以上の立会いが必要です。
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授します。
- それを公証人が筆記して、遺言者および証人に読み聞かせ、または筆記した内容を閲覧させます。
- 遺言者および証人が、その筆記の正確なことを承認したのちに署名・押印します。ただし、遺言者が署名することができない場合は、事由を付記して署名に変えることができます
- 公証人が方式にしたがって作成したことを付記して署名・押印します。
公正証書遺言は、法律専門家である公証人の関与のもとで作成するので、次のようなメリットがあります。
- 方式の不備や遺言の解釈あるいは遺言者の遺言能力の有無をめぐって、のちに争いが生じるおそれが少ないこと
- 遺言書の原本は、公証人の管理下(公証役場)で原則20年間保管されるので(大規模損害に備えた危機管理の手段として、2014年4月からは原本を電子的記録化して、原本とは別に遠隔地に保管する原本の二重保存が行われている)、遺言書の滅失・改ざんのおそれが少なく、しかも遺言ファイルのコンピューター管理によって遺言の所在を照会・検索することが容易であること
- 家庭裁判所の遺言検認手続きなしに、遺言内容を実現させることが可能であること
他面、普段あまり馴染みのない人の面前で作成するということは、遺言の手続きとしては多少の面倒さを感じさせるし、公正証書遺言作成の費用も必要です。
遺言の存在および内容を完全に秘密にしておくことができないのは、デメリットでもあります。
それでも公正証書遺言の数は増加しており、1970(昭和45)年には約1万3000件であったものが2022(令和4)年は11万1977件になっています。
通訳人の通訳などの改正
公正証書遺言では、遺言意思の真正さと正確性の担保のために、遺言者の口受と公証人による筆記内容の読み聞かせが重視されてきました。
口がきけない者、あるいは耳が聞こえない者が、公正証書遺言のメリットを享受することができるようにするために、1999(平成11)年によって通訳人の通訳(手話など)または自書(筆談)による方法を認める規定が追加されました。
公正証書遺言を規定した民法969条においても、筆記内容の閲覧による確認が可能とされるなど、聴覚・言語機能障害者に配慮した方式へと改められました(2000(平成12)年1月8日施行)。
公正証書遺言は、急速な高齢化の進展のなか遺言方式の改正とともに導入された任意後見契約(公正証書によることを要件とする)とあわせて行われることが見込まれます。
遺言者の口授等
遺言者の口授
遺言者の口授とは、遺言者が遺言の内容を公証人に直接に口頭で伝えることです。実際には、あらかじめ作成し交付された下書きないしメモ書きについて、公証人が証書を作成しておいて、その後に遺言者による口授を受け、それが書面の内容と一致していることを確認して読み聞かせをする場合、あるいは清書した証書を読み聞かせた後で、遺言者がそれを承認するか形で口授する場合も、少なくないようです。
判例は、順序の変更があっても全体として方式をふんでいるならば有効と解しています。
公証人の筆記
筆記に際しては、遺言者の口述をそのままの言葉で書き写す必要はなく、遺言の趣旨が明確に記載されていれば足ります。実際に筆記するのは公証人自身でなくてもよく、その指示にしたがって公証役場の書記が書いた場合も効力をさまたげられることはありません。
判例は、遺言者の面前で筆記する必要もなく、別室において行った場合も有効とし、学説もこれを指示しています。
遺言者および証人への読み聞かせまたは閲覧
従前は、公証人の筆記の正確性を確認するために、公証人は遺言者および証人に対して、筆記内容の読み聞かせをすることが求められていましたが、1999(平成11)年の改正により、閲覧させることによってこれにかえることができるようになりました。
直接的には視聴覚、言語機能障害者に対する配慮からくる改正ですが、障害のない者にとっても有用な方法であることから、公正証書遺言の一般的な方式として認められたものです。
越谷市・春日部市の遺言書作成美馬克康司法書士事務所

埼玉県越谷市千間台西1丁目12番地1
ダイアパレスルネッサせんげん台506号
TEL. 048-970-8046FAX. 048-970-8047
営業時間:8:30〜18:30土日祝営業
東武スカイツリーライン
せんげん台駅西口1分