遺言書保管制度の利点
遺言書の公的保管制度は、特に遺言の紛失、破棄・隠匿の防止に資するが、偽造・変造の防止にも役立つものです。
遺言法制として、これまでは家庭裁判所における遺言書の検認というかたちでの緩やかな法的関与にとどめられていましたが、法務局が自筆証書遺言の公的保管をし、遺言書保管の事実および遺言内容の証明をするかたちで国家が積極的な役割を果たす制度に転じたものです。
もちろん、法務局での遺言の保管は遺言の有効要件ではなく、まったくの任意とされているので、保管されていない遺言は、偽造されるおそれがありえます。
しかし、遺言者が法務局において、すでに遺言書を保管している場合、その遺言者に、保管されていない別の遺言書が存在しなければ、偽造・変造はありえないでしょう。
遺言者死亡後の手続き
遺言者が死亡し、相続が開始したのちに、相続人らが法務局に問い合わせることで、自己に関係する遺言の存否を知ることができます。
また、保管されている遺言書の内容についての証明書制度が設けられているので、相続登記などの際に便利です。
保管されている遺言書については、偽造・変造のおそれがないことから、遺言書の検認を要しないものとされています。
検認に要する時間と手間を省き、遺贈などの遺言による処分について、速やかに登記などの対応(対抗要件の具備)をすることができます。遺言者の最終意思の実現を確保するとともに、相続手続きの円滑化をも狙ったものです。
外国の遺言保管制度
ドイツの遺言保管制度
ドイツでは、我が国の公正証書遺言に相当する公的遺言については、証書作成後、公証人は遅滞なく管轄の区裁判所(遺産裁判所)での公的保管に伏さなければならないものとされています。
また、自筆証書遺言についても任意ではありますが、被相続人の請求により、区裁判所が公的に保管する制度があります。
これは、破棄・変造・隠匿などの危険のある自筆証書遺言の方式を、法が認めたことへの制度的対応として、民法制定当初から設けられている遺言保護・危険回避の手段です。
保管の請求については、特別の方式はなく、代理人・使者によることもできるし、郵送も可能であるとされています。区裁判所は、遺言を形式的にも内容的にも審査する義務はありませんが、明白な方式違背がある遺言については、遺言者はその旨を示唆することはあります。遺言者は、いつでも法的保管されている遺言書の返還を請求することができます。
公的遺言の場合は、遺言者に返還されると撤回されたものとみなされ効力を失いますが、自筆証書遺言の場合は、返還されても遺言の効力に影響しません。
ドイツでは、2012年から国の委託を受けて連邦公証人連合会が運営する連邦中央遺言登録所という機関があり、ドイツ全国の公的遺言および区裁判所などに公的保管された自筆証書遺言書その他相続にかかわる証書が報告され、集積されています。
ある人の死亡が身分登録所に届けられたときは、身分登録所は、死亡証書を発行するとともに、その電子データを中央遺言登録所に送信し、その遺言登録データと照合されます。
適合する遺言データが存在するときは、中央遺言登録所から遺言保管所および管轄裁判所に通知がなされ、裁判所から相続人などに通知される仕組みです。
記録によれば、2022年には約28万件の遺言が新規に登録され、そのうち自筆証書遺言は、約5万4400件です。
フランスの遺言保管制度
フランスでは、重要な法律行為には公証人が関与するのが通常です。
相続財産に不動産が含まれている場合、遺言がある場合には、必ず公証人を関与させなければならないことになっています。このことから、公証人が遺言所の管理をするものと考えられます。
法務局の遺言書保管の一覧
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