よくわかる遺言｜越谷遺言書作成（せんげん台駅1分／土日祝営業）

遺言者の死亡時からの効力

遺言による意思表示は、遺言者が生前に遺言の方式にしたがってなすことにより成立しますが、生前に成立していても意思表示としての効力（ひいては法律行為としての効力）が発生するのは、遺言者の死亡時です。

遺言者は、一度成立した遺言を自由に撤回することができますから、遺言者の生存中は受遺者として指定された者は、法律上の権利を条件付のものとしても得てるわけではありません。
遺言無効確認の訴えを、遺言者の生前に提起しても却下されます。

不動産の遺贈については、遺言者生存中の受遺者の地位は、不動産登記法１０５条２号にしたがって仮登記できる点とする裁判例がありますが、多くの学説はこれに否定的です。

効力の発生に一定の手続きを要する場合

遺言事項のなかには、一定の手続きを経ないと効力を発生しないものがあります。
その場合として、遺言による一般財団法人の設立があります。遺言者が死亡してもその後に遺言執行者が作成した定款が公証人により認証され、主たる事務所の所在地において設立の登記がされなければ、一般財団法人は設立しません。

遺言者の死亡後に一般財団法人が設立すると、拠出された財産は遺言が効力を生じたときから、訴求的に当該一般財団法人に帰属していたものとみなされます。

効力発生に一定手続きを要する場合として、遺言による推定相続人の廃除があります。推定相続人を廃除し、あるいは廃除されていた推定相続人について廃除を取り消す旨の遺言があるとき、遺言執行者は遺言者の死亡後に遅滞なく家庭裁判所に廃除あるいは廃除の取消しを請求しなければなりません。

その請求を認める家庭裁判所の審判が確定すると、廃除または廃除の取消しの効力は、被相続人の死亡時に遡及して生じます。

任意認知をする遺言も効力発生に一定の手続きを要します。すなわち、遺言執行者はその就職の日から１０日以内に届出をしなければなりません。

生前認知の届出はいわゆる創設的届出であるとされますが、遺言認知の届出は、報告的届出に過ぎません。よって、遺言による任意認知は、遺言の効力発生とともに有効に成立する、と解するのが通説的な考えです。

停止条件付遺言

「遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は条件が成就したときから効力を生じます」

「遺言に停止条件を付した場合」というときの「遺言」とは、遺言事項のことを指すと思われます。
実際には、遺贈に停止条件が付された場合を念頭に置いて、この意義が論じられることが多いようです。

遺言事項のなかには、停止条件を付することが許されるもの（遺贈が典型的）と、許されないもの（遺言認知）とがあります。

停止条件付遺言が設けられたのは、停止条件付遺言について条件成就時より前の時点に遡及して、遺言の効力が生ずるわけではないという原則を示すためであり、遺言者が条件成就の効果を成就時以前に遡及させる意思を表示していたときは、その意思にしたがうべきです。

なお停止条件が成就しあるいはその不成就が確定したのが遺言者の死亡時以前であった場合には、当初（遺言者の死亡時）から無条件の遺言事項または無効な遺言事項であるものと扱われます。

遺言事項について解除条件を付したり、始期や終期を付したりすることも当該遺言事項の性質上それが許されない場合を除いて可能です。

遺贈に停止条件が付された場合には、受遺者は遺言者の死亡時に停止条件付権利を取得します。そして、その後に条件が成就すると条件付でない完全な権利を取得することになります。

補充遺贈とは、当初予定された受遺者が遺贈利益を受けない事情（遺贈を放棄した、遺言者以前に死亡したなど）、その他所定の事情が生ずることを停止条件として、同じ遺贈利益を別の者に遺贈することをいいます。

他方で、遺贈に終期や解除条件が付されることは実益もなく、ほとんど考えられないともいわれています。

もっとも、いわゆる後継ぎ遺贈の説明のために終期付遺贈を第一次遺贈とした法的構成がおかれることがあります。