民法1017条の規定
(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
民法1017条
1. 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2. 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
本条の趣旨
本条は、複数の遺言執行者がある場合の執行方法につき規定をしました。遺言執行者の数について、民法では特に規定していません。
したがって、実際に遺言者が二人以上の遺言執行者を指定することもありうるし、家庭裁判所が複数の遺言執行者によることが妥当だと判断する可能性もあります。
そこで、本条では、遺言執行者が複数いる場合には遺言者の指示や保存行為でない限り、原則として多数決の原則にしたがい、過半数をもって任務の執行をするものとしました。
しかし、本条1項本文では、可否同数となって意見の対立が解消できない場合については、特別な規定がありません。
1019条による解任によるほかないと考える説もあります。
また、さらに遺言執行者を選任し人数を増員して多数決ができるかたちにする方が合理的であるという主張もあります。
ただし、例外的に遺言者が遺言に別段の意思表示をした場合と、保存行為については各共同遺言執行者が単独でできる旨の規定を置きました(本条2項)。
共同遺言執行者の執行方法
共同遺言執行者の権限と執行方法は、まずは遺言で被相続人が指示することで決まります。
たとえば、被相続人が共同遺言執行者のあいだの意見の対立の際に、そのうちの一人の意見で決するよう定めるとか、遺言の内容や相続財産によって任務の分担や役割・権限を指示することができます。
相続財産を構成する不動産の売却は、共同遺言執行者のうちの誰々とか、訴訟行為は弁護士の共同遺言執行者の誰それという具合に各遺言執行者の権限を定めてもよいです。
この場合、各共同遺言執行者は指示された範囲では各自独立して職務の実行を成しうると解されます。
なお、家屋の修繕、遺産債権の取立てや時効の中断などの目的物などの保存行為は、各遺言執行者が独立してそれぞれ職務の執行をすることができます。
保存行為は、修理などの事実行為だけでなく、目的物の引渡しや登記の抹消などの訴訟を提起したり、債権の取立てをする法律上の行為も含まれます。
遺言執行者の報酬
(遺言執行者の報酬)
民法1018条
1. 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2. 第648条第2項及び第3項並びに第648条の2の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。
本条の趣旨
明治民法では、遺言の執行を委任に類似するものとみて、委任と同様に無報酬を原則としていました。しかしながら、実際上の遺言の執行行為は相当に手間ひまがかかることも少なくなく、本条では遺言執行者の執行行為の有償性を前提にして遺言執行者の報酬の決定方法につき、規定を置きました。
報酬の決定方法
遺言執行者に対する報酬は、まず第一に被相続人の意思によって決定されます。被相続人が無報酬で執行すべきことを指示した場合も、原則的にはこれが優先することになるでしょう。
なお、被相続人の定めた報酬額があまりにも少ないとか、過大であるなどの事情があるときは、相続人は相当な範囲で増減を請求することができるでしょう。
第二に、被相続人が遺言執行者の報酬額を定めていない場合、無報酬が推定される特段の事情がない限り、遺言執行者は家庭裁判所に対して報酬の付与を申し出ることができます。
この場合に、家庭裁判所は相続財産の価額、種類、管理期間、執行行為の具体的内容や範囲、難易度などの一切の事情を斟酌して、相当な報酬額を定めることが可能です。
なお、相続人と遺言執行者との合意で、別に報酬の額などについて取決めることは差し支えないでしょう。
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