遺贈目的物の処分
目的物の一部の処分
包括遺贈を内容とする遺言がなされたのち、遺言者が自己の財産に属する特定のもの、権利を生前処分したとしても、包括遺贈と抵触するものではなく、撤回は犠牲されません。
相続の際の相続財産の処分を内容とする包括遺贈は、生前処分された財産を除く財産を目的とする遺贈として有効となりうるからです。
遺言者が複数の不動産を目的とする遺贈を内容とする遺言をしたのち、目的物の一部を第三者に処分売却し、または取り壊した場合について、裁判例には遺言者が生前処分に至った事情や遺言者、受遺者および相続人の関係などを考慮し、遺言全体が不可分的に撤回されるとはいえず、生前処分の対象とならなかった部分については有効であるとしたものがあります(高松高等裁判所判例平成6年2月18日)。
目的物売却のための準備行為
遺贈目的物である不動産について、遺言者が不動産業者とのあいだで選任媒介契約を締結、更新したとき当該契約は当該不動産の売却のためのものではあるが、必ずしも売買契約の制約をもたらすものではなく、同不動産を遺贈する旨の遺言の執行が客観的に不能となるものでないから、原則として「抵触」にあたらないとされています(東京地方裁判所判例平成30年12月10日)。
分筆・合筆
数筆の土地を目的として、共同相続人の一人に対して、いわゆる「相続させる」旨の遺言を行ったのちに、遺言者が遺言の対象となった数筆の土地の一部の合筆および分筆の登記手続きを行った場合には、土地の特定が極めて困難となり遺言の内容を実現するのに特に支障となるような事情のない限り、数筆の土地のうち登記手続きの対象となった部分について、先の遺言が無効となることはありません(大阪高等裁判所判例平成2年2月28日)。
両立させない趣旨が明白である場合
後の遺言と前の遺言とが両立不可能な程度に内容において抵触する場合でなくても、後の遺言が前の遺言と両立させない趣旨でなされたことが明白である場合には、撤回が擬制されると示した判例(大審院昭和18年3月19日)は、次のようなものでした。
妻死亡後にA女と同居生活をおくるようになったB男が、B死亡時まで同居生活をおくることを条件にAに1万円を与える旨の公正証書遺言をしたのち、同遺贈の履行に不安を感じたAからの申し出に応じて生前に5千円を贈与し、Aは以後Bの生涯にわたって何ら金銭の要求をしないことを約しました。
このような場合、のちになされた贈与契約は、前の遺贈と両立させない趣旨のもとになされたことが明白であるとして、遺言の撤回の効果が認められました。
抵触遺言または抵触行為による撤回擬制の効果
抵触遺言または抵触行為がなされたとき、前の遺言は「抵触する部分について」撤回が擬制されます。
明示の撤回行為による場合と同様に、全部の撤回だけでなく一部の撤回がありうるということです。
たとえば、第一遺言で甲不動産をAに遺贈し、第二遺言で甲不動産上にBのために地上権を設定した場合または遺言者が生前に甲不動産上にBのために地上権を設定した場合には、第一の遺言は地上権付きの甲不動産をAへ遺贈するものとして有効とされます。
民法1023条
1. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2. 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
遺言の撤回・取消し概説の一覧
越谷市・春日部市の遺言書作成美馬克康司法書士事務所
埼玉県越谷市千間台西1丁目12番地1
ダイアパレスルネッサせんげん台506号
TEL. 048-970-8046FAX. 048-970-8047
営業時間:8:30〜18:30土日祝営業
東武スカイツリーライン
せんげん台駅西口1分