民法1025条の趣旨
民法1025条
前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
本条文は、①一旦遺言がなされたが、②当該遺言が撤回され、その後、③撤回行為の効力が否定されたときに、元の遺言は復活しないのが原則であることを定めたものです。
ただし、この原則の例外として、②の撤回行為が錯誤、詐欺または強迫によってなされたために、撤回行為が取消された場合には、元の遺言は復活します。
遺言者の最終意思を確保するという遺言制度の本来の趣旨からすれば、遺言者の意思解釈の問題に帰すると考えられる場面ですが、遺言者の意思をその死後に明確にすることは極めて困難です。
意思解釈をめぐって利害関係人間に争いを生じやすいことから、解釈の基準を示したものです。
非復活主義によれば、遺言者が元の遺言を復活させたいときには改めて同じ遺言を作成すべきと考えられます。
本条の適用範囲
本条は、「撤回された」遺言、すなわち一旦効力を否定された遺言の効力の回復の有無に関して定めており、そもそも当初の遺言について撤回の効力が生じない場合には適用がありません。
たとえば、撤回行為にあたる撤回遺言、抵触遺言または生前行為が、意思無能力を理由として当初より無効である場合です。遺言者による遺贈目的物の故意の破棄である場合、遺言と抵触する遺言または抵触行為である場合には、本条による適用によるまでもないとの見解が有力です。
そもそも、遺言者が複数の遺言を残し、それぞれの効力や内容をめぐって相続人間に争いが生じやすいということを考えると、個々の遺言の有効性や相互関係も問題であり、本条の適用によるべきか事態が問題となることも多いものです。
撤回行為が抵触行為の場合
第一の遺言が抵触する生前行為により撤回されたのち、この生前行為の効力が否定された場合としては、撤回は考えられず、取消しが問題となります。
生前行為の取消しが、錯誤、詐欺または強迫を理由とする場合、本条但書の適用を受けるので、本文の非復活主義が適用されるのは、生前行為が行為能力の制限を理由に、取消された場合に限られます。
しばしばあげられる例が、満15歳以下の未成年者が、甲不動産をAに与える旨の遺言をしたのちに、未成年のうちに甲不動産をBに売却したが、その売却行為が法定代理人の同意を得ていないことを理由に取消された場合です。
撤回行為が事実行為の場合
遺言書の破棄または遺贈目的物の破棄という事実行為によって第一の遺言の撤回が擬制される場合については、撤回行為である事実行為が撤回などにより、効力を生じなくなる場合が考えられないので、「前3条の規定によって」との文言にかかわらず、本条の適用の対象になりえないと解されてきました。
しかし、一旦破棄した遺言書をセロテープなどで修復した場合や遺言書の全面に斜線を引いて、のちの遺言を斜線を無視するよう指示する場合が考えられ、これらの場合には本条の適用により第一の遺言が復活しないといえます。
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