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撤回行為が「効力を生じなくなるに至ったとき」

撤回行為が「効力を生じなくなるに至ったとき」

総説

撤回行為が、「効力を生じなくなるに至ったとき」とは、撤回または取消し以外の事由によって、撤回行為の効力が生じなくなった場合をいいます。

撤回行為が遺言の場合と、撤回が生前処分の場合が考えられます。

撤回行為が遺言の場合

甲土地をAに与える旨の第一遺言ののちに、甲土地をBに与える旨の第二遺言がなされ、第一遺言の撤回が擬制された場合において、受贈者のBが遺言者よりも前に死亡した場合、第二遺言は効力は生じませんが、第一遺言の効力は回復しません。

同様に、なされた第二遺言の遺贈が解除条件付きであり、遺言者の死亡より前に条件が成就したような場合も第一遺言の効力は回復しません。

撤回遺言または抵触遺言が、特別の方式によってなされた場合には、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになったときから6か月生存すれば、それらの遺言は効力を生じなくなることから、民法1025条の適用があるかどうかが問題になります。

裁判例には、死亡危急者遺言の方式によりなされた撤回遺言の効力が生じない場合については、傍論としてですが、第一遺言の効力は復活しないとしたものがあります。

撤回行為が生前処分の場合

遺言に抵触する生前行為が効力を生じなくなる例は、あまり考えられないようです。
あえて挙げれば、生前行為が遡及功を有する解除条件付きであって、その条件が遺言者の死亡より前に成就した場合がこれにあたり、先行する遺言は復活しないとされます。

停止条件付の生前行為の条件不成就の場合は、生前行為の効力が生じずそもそも抵触行為がないので、本条の問題にはならないと考えられています。

撤回行為の取消しが錯誤などの場合

先行する遺言を撤回する効果を生じさせる生前処分が錯誤、詐欺またはを理由に取消された場合は、撤回の行為が遺言者の真意に出たものでないことが明らかであることから、先行する遺言の効力が復活します。

下記にご紹介の民法1025条但書は、いわば当然のことを定めたことであり、遺言は当初から撤回されなかったものとして効力を有するとも考えられます。撤回行為が遺言の場合については、錯誤、詐欺または強迫によってなされた遺言の効力をどのように考えるかが問題となります。

取消しができると解するなら、取消し権者は誰か(相続人のみか遺言者自身も含むか)の問題があるとしても、本条但書の適用対象となります。

錯誤、詐欺または強迫による遺言は無効と解するなら、先行する遺言は撤回されていないことになり、その効力が認められます。

最高裁判所判例平成9年11月13日の判旨

原遺言を遺言の方式にしたがって撤回した遺言者が、さらに右撤回遺言を遺言の方式にしたがって撤回した場合について、次のように解されます。

遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、本条但書の法意に鑑み、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当と解されます。

民法1025条
前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

遺言の撤回権の放棄の禁止

趣旨

遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない、と規定されています(民法1026条)。

遺言の撤回の自由は遺言の自由の重要な一面であるが、このことから当然に撤回権の放棄の禁止が導かれるわけではありません。

1026条は、単に注意的に遺言の撤回権の放棄が許されないことを明らかにしたものです。

撤回権放棄禁止の効果

撤回権の放棄としてたとえば遺言者の遺言中で、これが最終の遺言であって撤回することはない旨を表示することがあります。
または、受遺者その他の者と撤回しない旨を約するこが考えられます。

1026条により、遺言者はこれらの撤回権放棄の意思表示に拘束されないから、撤回しない旨を表示した遺言と矛盾する第二遺言を作成する、遺贈目的物を受遺者以外の者に譲渡するなどの方法で遺言を撤回することができます。

取消し原因のある遺言の追認と撤回権放棄禁止

遺言が錯誤、詐欺または強迫などによってなされた場合に、取消権と撤回権との関係が問題となります。
遺言の撤回権の放棄が禁止されることから、たとえばAがBの詐欺により、甲不動産をBに遺贈する旨の遺言をし、その後、AがBの詐欺を知りながら、当該遺言を追認したとします。この場合であっても、異なる内容の遺言をし、または甲不動産をB以外の者に譲渡するなどにより、Bへの遺贈を内容とする遺言を撤回することができます。

記事作成:司法書士・行政書士 美馬克康

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